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産後1か月: 母乳分泌の確立(増加)

本格的な母乳育児

この期間は、赤ちゃんが本格的に母乳を飲み始め、赤ちゃんの成長するお腹を満たすためにお母さまの母乳分泌量が増加し確立する時期です。スクロールしてもっと読む

1か月目の終わりまでに、母乳は完全に成乳となります。⁸⁸ また、成乳は初乳とはまったく異なり、脂肪が多いためカロリーが高く、分泌量もどんどん増えていきます。

 

母乳のすごいところはいくつもありますが、その一つに、「母乳は生きていて、赤ちゃんの健康に対する脅威に積極的に立ち向かう」ということが挙げられます。通常、成乳には免疫細胞が少量(最大2パーセント)しか含まれていません。しかし、お母さまがご自身または赤ちゃんに感染するおそれのある細菌やウイルスを呼吸や飲食で取り込むと、免疫細胞が母乳内の細胞数の94パーセントにまで急上昇します。⁸⁹ 感染症の脅威が去ると、母乳はまた元に戻ります。


第3章で述べたように、母乳に含まれる一部のオリゴ糖は危険な細菌が赤ちゃんの腸壁にくっつくのを防ぎます。他のオリゴ糖は赤ちゃんを成長と共に守る「役に立つ」細菌を与えることで、赤ちゃんの防御のための微生物による腸内フローラを構築し始めます。⁹⁰


また、赤ちゃんにたくさん授乳するほど、母乳量は増えるということを覚えておいてください。⁹¹ それは需要と供給の関係です。 


科学者たちは、母乳には「乳汁産生抑制因子(FIL)」と呼ばれるものが含まれており、これが母乳分泌の速度を遅くさせると信じています。⁹² 赤ちゃんが母乳を飲み干すと、FILの量も減り、必要な母乳をもっと作るために乳腺細胞を解き放ちます。ですから、定期的に乳房が空になると、定期的に「もっと補充するように」というメッセージを受け取ります。また、双子または三つ子に授乳している場合も、全員に与えるのに十分な量を作ることができます。⁹³


乳房は互いに別々に働くため、赤ちゃんが片側を好んだり、好みが違う双子がいる場合、左右それぞれの乳房が出す量が変わる傾向があります。⁹⁴


赤ちゃんに与える母乳量を減らすと、このプロセスが逆に働きます。乳房は母乳で張りますが、出る量は減ります。結果として、乳房に留まっている母乳に含まれるFILが細胞にスローダウンするよう伝え、最終的にはたくさんの母乳を作ることをやめます。断乳や卒乳の際にはこのメカニズムが働きます。


母乳量を減らそうと思っていたけれどやはり考え直した場合や、赤ちゃんが元気がなくなって母乳だけを欲しがったりした場合など、必要な量が増えると、母乳量をもう一度増やすこともできます。

知っていましたか?

母乳育児はお母さまのストレスを軽減します

信じられないかもしれませんが、母乳はすでに長期にわたるメリットをもたらしています。お母さまが現時点でどのように感じていたとしても、研究者たちはわずか数週間でも母乳育児をしたことがある母親は、オキシトシンの流れのおかげで、血圧が低く、⁹⁵ 身体の器官がストレスにうまく対処できることを発見しています。⁹⁶

赤ちゃんが生後14日になるまでに、乳房は初日に分泌した母乳量の最大12倍を分泌するようになります。⁹⁷